Preventative 歯のメンテナンス

「6ヶ月に一度メインテナンスに来てくださいね!」

歯医者さんでの治療終了時に、上記のようなことを言われませんでしたか?
「痛い思いをしながら通った歯医者がやっと終わったのに、なんでまた定期的に歯医者に通わなければいけないの?!」と思われたかもしれません。

確かにあなたの心の叫びはよく分かります。
ですが、歯科医院側が「定期的に通ってくださいね」とお伝えするのには、理由があるからです。
それについてご説明していきます。

歯のメンテナンスの必要性。歯は削れば削るほど悪くなる?!

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「虫歯になっても、歯を削って治療すれば良くなる」 このように考えている方は多いのではないでしょうか?

治療をすれば痛みなどがなくなり、確かに良くなったような気がします。
また、硬い金属の詰め物・かぶせ物をすると、何だか以前よりも歯が丈夫になった感じがしますよね。

しかし、残念ながら歯は治療すればするほど悪くなるのです・・・。

あまり知られていない事ですが、お口の中というのは非常に過酷な環境に置かれています。
食物を噛み砕く際に、お口のなかでは上下の歯が激しくぶつかり合い、熱い食べ物や冷たい飲み物が絶えず入ってきます。この厳しい環境下では、虫歯治療後に入れた「詰め物・かぶせもの」は変形し、歯との間には目で確認できないほどの小さな隙間が生じてしまいます。その小さな隙間から虫歯菌は侵入し、虫歯を再発させる原因となります。

再発した虫歯は当然治療する必要があるのですが、以前治療した時よりも虫歯が進行しているので、さらに大きく歯を削ることとなります。

この再治療のサイクルを繰り返してしまうと、最終的には削る歯もなくなり、抜歯、そしてインプラント・入れ歯・ブリッジの流れを辿ることとなってしまいます。

このことを裏付けるデータとして、成人の方の虫歯治療の60~80%は、新たにできた虫歯の治療ではなく、過去に治療した歯の再治療であると言われています。

一度治療した歯は決して強固になったのではなく、弱くなったという認識が大切です。
せっかく大切な時間と費用をかけて行った虫歯治療を無駄にしないためにも、予防・メインテナンスの正しい知識を持ち、少しだけこれまでと違う行動をとることが大切となります。

歯磨きだけでは虫歯・歯周病は予防できない?!

「毎日、歯を磨いているのに虫歯・歯周病になるのはどうしてですか?」
「虫歯・歯周病になるのは、私の歯磨きの仕方が悪いからですか?」
患者様からよく聞かれる質問です。
もちろん、毎日の歯磨き習慣は大切なことに変わりはありません。
しかしながら、きちんと歯磨きを行ったとしても、残念ですが虫歯・歯周病を予防することができないのも事実なのです。

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その秘密は、「バイオフィルム」とよばれる歯磨きをしていても除去できない強力な汚れにあります。このことをお伝えするために、患者さんには次のような例え話をすることにしています。

たとえば、毎日、台所の三角コーナーの中にある「生ごみ」を捨てますよね。
これがお口の中でいう、“歯を磨く”ことにあたります。
しかし、毎日、生ごみを捨てていても1ヵ月もすると、“ヌメヌメ”してきますよね。
実は、これと同じことがあなたのお口の中でも起きているのです。

この三角コーナーのヌメヌメを綺麗にするためにどうしているでしょうか?
おそらく、クレンザーなどの強力な洗剤を使用して、元通りのピカピカの状態に戻しているとおもいます。

三角コーナーと異なり、お口の中では、このような強力な洗剤を使用することはできません。したがって、それよりも安全な“洗剤”として、普段あなたが使用している歯磨き剤を使用することになります。

しかし、残念なことに歯磨き剤だけでは口の中の“ヌメヌメ”を完全に落とし切ることはできません。ヌメヌメがある限り、虫歯や歯周病になる可能性は残っているのです。
これが、毎日歯磨きをしても虫歯・歯周病になってしまうメカニズムです。

お口の中にできる“ヌメヌメ”をバイオフィルムと呼び、虫歯菌・歯周病菌などにとっては自分の身を守ってくれるバリアのようなものだと考えて良いでしょう。このバリアを壊さない限り、虫歯菌・歯周病菌などに直接的な攻撃を加えることはできないのです。

このバリア(バイオフィルム)を除去するためには、
PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)と呼ばれる“プロによる機械を用いた歯のクリーニング”を定期的に歯科医院で受ける必要があります。

PMTC

保険治療。クリーニングで歯の汚れを除去した症例。リスクは、特にない。

※PMTCでは、歯磨きで落ちない頑固な汚れのバイオフィルム・歯石を除去するだけでなく、タバコのヤニなどの歯の汚れも除去することができ、歯の自然な白さがよみがえります。また、歯がツルツルになり、お口の中がサッパリします。PMTCでは、柔らかい特殊な器具を使うので痛みを抑えられます。

定期的メインテナンスの絶大な効果

歯科医院での定期的な予防・メインテナンスを「した方」と「そうでない方」の年齢別の統計があります。これによると80歳になったときに残っている歯の本数にはメインテナンスを「した方」と「そうでない方」には9本近くの開きがでるという結果になりました。

以下では、もっと分かりやすく「メインテナンス」をしている場合としていない場合の比較を説明したいと思います。

「痛い時だけ通院する方」と「定期的に通院する方」の歯のライフサイクルと治療費の比較

【痛い時だけ通院する方の歯のライフサイクル】

定期的に通院する方の歯のライフサイクル】

出典:日吉歯科診療所調べ

「6ヶ月に1回の定期的メインテナンスに行くのは面倒だし、歯が痛くもないのに歯医者に行ってたら治療費も高くなってしまうよ」と感じられる方は非常に多いように思いますが、 この結果をご覧になっていかがでしょうか。

定期的に通院した方が、約300万円も治療費を安く済ませることができています。

また、歯科医師としてなによりも主張したい点は、「80歳になっても自分の歯でいられる」ということの素晴らしさです。

一般の方々は「歳をとれば、自然に歯が抜けてしまうものだ」とお考えの方がいると思いますが、事実は違います。若い頃から歯科医院で定期的にメインテナンスを受けていれば、上記の図にもあるように、「入れ歯知らず」の人生を歩むことができるのです。

歯を失うことの辛さは、実際に歯を失った方でないと分りませんが、事実、生活の質が落ちてしまいます。快適な老後を送るためにも、早いうちから歯のありがたみを理解し、日々のブラッシング、定期的なメインテナンスを生活習慣の1つに組み込むことが非常に大切となります。

「治療の連鎖」を断ち切るために

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ここまで読んでいただければ、虫歯・歯周病の治療が終了しても、治療前の生活習慣や歯に対する考えが変わっていなければ、再治療の可能性が高まることについてお分かりいただけたかと思います。

現在の歯科医療では、虫歯・歯周病の原因が解明されており、どのようにすれば虫歯・歯周病を防げるのかの予防法が確立しています。

虫歯・歯周病になってしまったのには、あなたにそれだけのリスク(生活習慣、ブラッシングの方法、間食など) が存在していたからです。このリスクを減らすことができなければ、治療したとしても再発する可能性は高まります。

歯医者でのメインテナンスでは、単に歯石・バイオフィルムなどを除去するだけでなく、あなたのリスクを把握し、そのリスクコントロールのアドバイスも行いますので是非有効にご活用ください。

せっかく治療した歯。できるだけ長く、快適な状態でいたいですよね!
今度は治療ではなく、お口のケアのために歯医者におこしください! 6ヶ月ごとの定期的なメインテナンスをお勧めします。

コラム-高齢者の方こそ予防メインテナンスを!

「なんだか最近、若い頃と比較して口が乾燥してきたような気がする・・・」

患者様との会話から出てきたのが、この言葉です。
この患者様が、若い頃にお口の渇きを感じなかったのは、口のなかで唾液が豊富に潤っていたからです。ですが、人間は加齢とともに唾液の分泌量が徐々に減少する傾向にあるため、この患者様は最近になりお口の渇きを気にされるようになってきました。

ここでは加齢に伴う唾液量の減少が引き起こす様々な症状について、少しお話させていただきます。

唾液量の低下による弊害①:全身疾患の原因となりえます

唾液の分泌量が減ることで様々な全身疾患を引き起こすことがあります。

「なぜ唾液が減ることで全身疾患を引き起こす恐れがあるの?」と思われたかもしれません。それは唾液には殺菌作用があるためです。

お口の中には何十億という細菌がいるのですが、通常は唾液の殺菌作用のおかげで活動を抑えられています。しかし唾液の分泌量が減るとそのバランスは崩れ、細菌が悪さを始め全身疾患を引き起こすのです。

たとえば、お口の中にいる細菌の1つとして「歯周病菌」がいます。
最近の研究では、糖尿病・ガン・心筋梗塞・早産・低体重児出産・エイズウィルスの活性化などに関与していると報告されています。

唾液量の減少による弊害①:口臭

みなさんは、なぜ口臭が発生するのかご存知でしょうか?

先ほどもお話ししましたが、お口のなかには大量の細菌がいます。
その細菌がお口の中に残った食べカスを分解する際にガスを発生させるのですが、それが匂いの元(口臭)となります。

ですが、普段そんなに気になるほどの口臭はしないですよね?
それは、「殺菌作用」を持つ唾液が細菌の活動を抑えてくれているからなのです。

しかし、殺菌作用を持つ唾液の分泌が減ることで、細菌は活発化し、知らず知らずのうちに、強烈な口臭を周囲にまき散らすことになります。

お口の渇きがもたらす細菌の活性化、そしてその弊害はご理解いただけましたでしょうか?

「これらを防ぐためにも唾液をもっと増やしましょう!!」とお伝えしても、あまり現実的ではありません。なぜなら、加齢に伴う唾液の分泌量低下を抑えるのは至難の業といえるからです。

それでは、どうするか?
どの方でもできることとしては、「細菌の数をいかに減らすか」ということです。

歯科医院で行う予防・メインテナンスは、お口のなかの細菌を減らすことができます。 ですので、細菌への抵抗力が弱まっている高齢者の方こそ、ぜひ定期的に歯科医院で予防・メインテナンス治療を受けられることをお薦め致します。

また、歯科医院への通院と同時並行で、
歯科医院で販売されているデンタルリンスをぜひ使ってください。
デンタルリンスは1分もあればできる非常に簡単な対処方法であり、お口のなかにいる細菌の数を減少させることが可能となります。
デンタルリンスと一緒に歯間ブラシやデンタルフロスを使用すれば、効果はより一層高いものになります。

このようにお伝えすると、「面倒くさい」と思われる方もいらっしゃいます。
ですが、長期にわたってあなたが健康でいることは周りの方々、
そしてなによりもご家族への愛情といえるのではないでしょうか。

ぜひ長期にわたってあなたが健康でいるためのチャレンジをしていただければと思います。

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